あおり運転の厳罰化について解説

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昨今、あおり運転によって発生した交通事故により被害者が死亡してしまったような事件があり、あおり運転が大きな社会問題として捉えられるようになりました。そこで、今年(令和2年)に道路交通法が改正され、あおり運転が厳罰化される改正がなされました。そこで、今回はあおり運転に関するこれまでの状況と改正によって何が変わったのかといった点について解説していきます。

改正前までの状況

相手の車の前に割り込んで急ブレーキをかける、ギリギリまで幅寄せしながら運転をするなどがあおり運転でよく見られる運転行為ですが、こうした行為についてこれまではあおり運転を直接処罰する規定がありませんでした。 しかし、2017年に東名高速道路であおり運転をしていた自動車にあおられた自動車に乗っていた夫婦が死亡するという痛ましい事故が起きてから、社会的にあおり運転の問題が認知され、今回の改正に至りました。 なお、改正前までは仮に警察が捜査すると言っても暴行罪という罪名で捜査をするほか無く、暴行罪の法定刑が2年以下の懲役か30万円以下の罰金という非常に法定刑の軽い犯罪となっているためこの点についても社会的な批判が集まったところでした。

改正後の道路交通法

こうした事件を受けて改正後の道路交通法には新たに妨害運転罪という刑罰が設けられることになりました。妨害運転罪の条文は読んでも内容が分かりにくいので簡単に説明すると、以下のような行為が妨害運転罪として禁止されることになりました。 他の車両等の通行を妨害する目的で、以下の①~⑩までの行為をすることが妨害運転罪に該当することになりました。 ① 通行区分違反 ② 急ブレーキ禁止違反 ③ 車間距離不保持 ④ 進路変更禁止違反 ⑤ 追越し違反 ⑥ 減光等義務違反 ⑦ 警音器使用制限違反 ⑧ 安全運転義務違反 ⑨ 最低速度違反(高速自動車国道) ⑩ 高速自動車国道等駐停車違反 違反した場合には、    ・3年以下の懲役又は50万円以下の罰金    ・違反点数25点    ・運転免許の取消し(欠格期間2年、前歴や累積点数がある場合には最大5年) が科されることになり、上記違反行為によって著しい交通の危険を生じさせた場合、    ・5年以下の懲役又は100万円以下の罰金    ・違反点数35点    ・運転免許の取消し(欠格期間3年、前歴や累積点数がある場合には最大10年) とさらに重い罰が科されることになっています。

注意点

今回の改正で注意したいのが、この妨害運転罪に該当してしまうと一発で免許取り消しがされる可能性があるという点です。これは非常に重い罰則になっているため、運転手の方は十分に気をつける必要があります。 また、①~⑩に記載した行為は自動車だけではなく、自転車に対しても適用があります。自転車に対して適用があるのは、⑥、⑨、⑩を除く7つのみですがそれでも十分に注意する必要があります。特に自転車はこれまで規制の少ない分野であったため運転手の意識としてこのような行為を避けるべきという認識が欠けている人も少なくないでしょう。 十分に注意する必要があります。

まとめ

道路交通法の改正により、あおり運転が厳罰化され交通指導の取り締まりの対象にもなるようになりました。ただ、現状ではまだまだどこまでが禁止されていて、どこまでがセーフなのかといった境界線が分かりにくく今後の事例の集積が待たれるポイントでもあります。ドライバーのみなさんはあおり運転にあったら慌てず、自動車を安全な位置に停車させ、警察へ通報しましょう。決してムキになったり腹を立ててはいけません。 こうした対応はさらなる自己に発展してしまう可能性や、ドライバー間のいざこざにもつながりかねないからです。 運転はあわてず、余裕を持って行うよう心がけたいものです。

従業員の起こした交通事故について会社は従業員に請求できるのか?

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会社の従業員が業務中に起こした事故については、従業員個人だけでは無く会社に対しても損害賠償請求が可能なことは比較的有名と思われますが、他方で会社としては本来交通事故を起こしたのは従業員なのですから、従業員個人へ負担してほしいと思う場合も少なくないでしょう。 しかし、実際にそんなことは可能なのでしょうか?そこで今回は従業員が業務中に起こしてしまった交通事故についての会社の責任と、会社が従業員に対して請求できるのかについて解説していきます。

従業員の交通事故について会社が責任を負う根拠

そもそも会社はどういった法的根拠に基づいて従業員の起こした事故について責任を負うのでしょうか。 この点については民法の715条がそのルールを定めています。 「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」 条文だけ読むと分かりにくいですが、つまり他人を雇ったり、用いて事業を行っている者が、その雇った人や使用している人が事業に際して第三者に損害を生じた場合(交通事故など)には、雇い主が賠償責任を負うという規定になっています。 実際に第三者に損害を生じているのは雇われている側なのに、会社が何故責任を負わなければいけないのか不思議に思うかもしれませんが、会社や雇い主は人を使って商売を行っている訳です。そうした商売には利益を得ることができるメリットもありますが、動じに第三者に対し損害を与えてしまうような場合も考えられるところです。 そうしたメリットを享受しているのだからリスクについても受け入れるべきであるというのがこの使用者責任の発想の根本となっています。 なお、「事業の執行について」という文言についてはわかりやすさのために、業務中という説明をしましたが、判例や裁判例などで厳密には業務中で無いけれど「事業の執行について」に該当するという結論を出す場合が多く、ケースバイケースでの判断がなされています。この点については、是非専門家にご相談頂くことをオススメします。

会社から従業員への求償

ここまでは会社が使用者の不法行為責任について責任を負うことについて見てきましたが、会社を経営する経営者の方から見れば、会社が負担するのは分かるが一部だけでも従業員に負担させることができないのかといった気持ちを持たれる方も少なくないでしょう。 この点については民法は次のように定めています。 「前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。」 この規定を素直に読むと、被用者、つまり事故を起こした従業員に対して求償を全額できるようにも読めます。 しかし、実際の裁判例などではこうした運用はされていません。最高裁の判決でも被用者から使用者への求償は、被用者の行為が使用者の業務としてなされた以上、たとえ実際に業務を行っているのが仕様車であっても、使用者が損害発生に寄与したものとして、使用者が応分の負担をなすべきだと考えるとしています。 このような観点から判例は「諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」において求償しうると判断し、全額の求償については認めないというのが裁判例などでの一般的な取り扱いとなっています。

従業員が事故を起こしてしまったら

従業員が事故を起こしてしまった場合には高い確率で会社がその損害を負担すべきという場面になります。従業員へどの程度求償するのか、本当に会社が責任を負わなければいけないのかといった部分も含めて、事前にご相談されることをおすすめします。

交通事故の死亡事故の場合における損害賠償について

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交通事故の中でも死亡事故は被害者が亡くなってしまうケースであり、非常に損害賠償の金額や示談金が高額になるケースが多い事故の一つです。しかし、何故高額になるのかと言った点についてお分かりの方は意外と少ないのではないでしょうか。そこで本記事では、死亡事故の際の損害賠償額や示談金額が何故高額になるのか内容に触れつつ解説していきます。

 

交通事故の損害賠償の内訳

交通事故、特に死亡事故の場合に発生する損害賠償の内容は以下のような項目になります。

①逸失利益

②死亡慰謝料

それぞれどのようなものになるか、項目ごとに見ていきましょう。

 

①逸失利益

死亡事故の中で最も大きな割合を占めるのがこの逸失利益です。被害者が生きていた場合に仕事などで得られたであろう収入を仮定して、得られなかった部分、つまり残りの人生で得るはずであった利益を損害とするというものです。

では、実際にどのような方法で逸失利益は計算されるのでしょうか。

計算式としては以下のようになります。

逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

 

生活費控除率というのは、死亡によって生活費が不要になるためその分を控除するために設けられた数値です。被害者が一家の大黒柱であったか等によって異なりますが、大体50%~30%間で計算されます。

 

最後にライプニッツ係数とは何かと思われるでしょうがこれについては非常に複雑で説明すると非常に長くなってしまうので割愛させて頂きます。一応就労可能年数ごとに保険会社などで決めた係数がインターネットなどでも公表されておりますので、詳細はそちらをご参照ください。

さて、逸失利益の計算を見て頂ければお分かりの通り、基本的にはその人の収入額に対して残りの就労可能と思われる期間をかけたものが数字の根拠になっています。

したがって、収入の高い方を交通事故で死亡させてしまったようなケースでは非常に高額な逸失利益が発生することになります。

例えば、事故当時年収1000万円、52歳の会社員が妻子を残して死亡してしまったようなケースでは、

基礎収入1000万円、生活費控除率30%、労働能力喪失期間(67歳までの年数=15年)に対応するライプニッツ係数10.380で計算されることになるため、

逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×ライプニッツ係数

    =1,0000000×(1-0.3)×10.380

    =72,660,000

つまり7266万円がこの場合の逸失利益となります。

 

②死亡慰謝料

逸失利益と並んで死亡事故の場合に大きな割合を占めるのが死亡慰謝料です。死亡慰謝料は、被害者が死亡したときに遺族の方に支払われる慰謝料です。

被害者が死んでいるのに何故慰謝料が発生するのか不自然に思う方もいるかもしれませんが、被害者の方は死亡する瞬間に強い不安感や恐怖感を感じていると考えられるので、被害者に対して慰謝料が発生すると考えられています。 こうして発生した慰謝料を遺族の方が相続するので、慰謝料請求ができると考えられています。

相続により請求することになるため、被害者と一定の関係にある親族しか請求することができません。具体的には①被害者の配偶者との子、②被害者の配偶者、③被害者の直系尊属(両親など)④被害者の兄弟姉妹等に限定されます。

 

その他の死亡事故の場合の問題

死亡自己特有の問題としては、事故の処理を進めていく必要がある一方で被害者の方の相続を進めていかなければならないという問題もあります。特に死亡から一定期間が経過してしまうと、全てを無条件で相続することになってしまうため借金などがあった場合には、予期せぬ借金まで相続することになってしまいます。

死亡事故の場合にはこうした借金問題と併せて解決する必要があるため、早い段階で専門家へご相談されることをおすすめします。

意外と説明できない?人身事故と物損事故の違い

今日は人身事故と物損事故の違いについて解説していきたいと思います。というのも、何となく二つの言葉があることや、違いがあるということを知っている方は多いのですが、いざどう違うのかという場面になると、正確に答えられる方は非常に少ないと感じているからです。 人身事故になるか物損事故になるかで、交通事故の処理というのは全く変わってきます。二つの違いをしっかりと押さえて適切な対処をしましょう。

人身事故と物損事故とは?

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中身に入っていく前に、まずは、物損事故と人身事故とはそもそも何なのかと言う点から抑えていきましょう。

物損事故

物損事故とは交通事故のうちで物的な損害のみが発生した事故のことをいいます。

人身事故

人身事故とは交通事故により被害者がケガをしたり死亡したような事故のことをいいます。

ポイント

上の説明だけ聞くと元々持たれていたイメージに近いかもしれませんが、ここで重要なポイントとなるのは物損事故は、「物的な損害のみ」が対象になっている点です。 つまり、被害者がケガをした場合には、物損事故ではなく人身事故ということです。 物損事故はあくまでも、被害者が存在しない場合にのみ物損事故として処理されるという事になっています。この点を誤り、被害届を出さないでいると、人身事故なのに物損事故として扱われるリスクがあるということは前回ご説明いたしました。 被害届を出さない事のリスクについては、詳しくは前回の記事をご覧ください。

物損事故の場合の保険の対象について

では、物損事故を起こした場合の保険は何が対象になるのでしょうか。 保険のため、厳密には保険会社との契約内容によって異なりますが、多くの場合、対象になっているのは、乗っていた自動車や事故により破損させた物だけが対象になります。 ケガした場合でも物損事故として取り扱われてしまえば、保険の対象にはなりません。なぜなら、事故でケガをした人はいないということになっているからです。 この点が物損事故として処理されることによる被害者にとっての最大の怖い部分になります。 前回の記事でも触れましたが、被害届を出さないということはケガをした人がいないと扱われることになりかねません。そうなると保険会社も物損事故として処理するため、後からケガ人がいたことが分かっても、それが本当に事故でケガをした人なのかそうでないのかの判断がつかないため、対応が遅れることにもなります。 改めての注意点ですが、交通事故に遭い、ケガをしたときには絶対に被害届を提出しましょう。

人身事故の場合の保険の対象

他方で、人身事故の場合には治療費・入院費を初めとして、入通院慰謝料や、事故によって後遺症を負った場合の慰謝料、逸失利益など様々なものが対象となります。こうしたものは人身事故として扱われることで初めて対象になります。

人身事故として扱われるために必要なもの

被害者としてはまずは被害届を警察に出しましょう。実際に保険会社が人身事故として処理するためには事故証明が必要になりますが、これも警察が人身事故として事故証明書を作成することが必須になります。

交通事故が発生したときは必ず通報し被害届を出しましょう

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繰り返しになりますが、交通事故に遭ったら必ず被害届を出すこと、そしてその場で警察に通報することが必須です。また、法律上加害者は、被害者を救護する義務に加え警察に通報する義務を負っています。 こうした義務を怠り、被害届を出さないように持ちかけてきたり、通報しないでほしいという人はそれだけで怪しい人です。そのような人間の持ちかけてくる条件や、そのような人と直接交渉を行うのは非常に難しいです。 きちんと被害届を出し、法律に則った手続きで進めましょう。

追突で被害者に過失割合が認められる場合とは?

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交通事故の中で追突は最も起きやすい事故です。そこで、万が一、追突された場合に備えて被害者の過失割合を知っておくことは有益かと考えます。今回は、追突で被害者に過失割合が認められる場合について解説してまいります。

 

追突と被害者の過失割合

追突における被害者の過失割合は、基本は「0」と考えてよいですが、被害者に法令違反等の過失(落ち度)が認められる場合は一定程度の過失割合が認められてしまいます。

追突した側(加害者)が「10」、追突された側(被害者)が「0」が基本

追突の典型事例は、被害者が信号待ち等で停止していたところ、加害者がその後方から被害車両に衝突した、という場合ではないでしょうか?この場合、加害者には前方をよく確認しながら運転する注意義務があるのにこれを怠った過失が認められます。他方で、被害者には後方を確認すべき注意義務を課すことはできませんから過失(落ち度)を認めることができません。したがって、上記の場合、加害者の過失割合は「10」、被害者の過失割合は「0」とされるのが基本です。

追突で被害者に過失割合が認められる場合

もっとも、上記は追突の基本的ケースで、以下のとおり、状況によっては追突でも被害者に過失割合が認められてしまう場合があります。

被害者が駐停車禁止場所に駐停車していた場合

被害者が駐停車禁止場所に駐停車していた場合は被害者に「1~2」の過失割合が認められてしまう可能性があります。

道路交通法44条では車両が駐停車してはいけない場所等について細かく規定されています。

 

※駐車:車両等が客待ち等のため継続的に停止すること。又は、車両等が停止し、  

当該車両等の運転手がその車両等を離れて、直ちに運転することができない状態であること。

※停車:駐車以外の停止。

 

被害者が駐停車方法を守っていなかった場合

被害者が駐停車方法を守っていなかった場合も、被害者に「1~2」の過失割合が認められてしまう可能性があります。

道路交通法47条1項では「停車」方法について、「人を乗降させるとき、貨物を積卸しするときは、できる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない」と規定されています。また、同条2項では「駐車」方法について、「道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならにようにしなければならない」と規定されています。

被害者が灯火義務を怠っていた場合

被害者が灯火義務を怠っていた場合も、被害者に「1~2」の過失割合が認められてしまう可能性があります。

道路交通法52条1項では、「車両等は、夜間、道路にあるときは、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない」と規定されています。なお、夜間とは日没時から日出時までの時間をいいますから、季節によって灯火する時間帯が異なることに注意が必要です。

被害者が不必要な急ブレーキをかけた場合

被害者が不必要な急ブレーキをかけた場合は、「3」前後の過失割合が認められてしまう可能性があります。

道路交通法24条では「車両等の運転手は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない」と規定されています。仮に、加害者から急ブレーキによる過失を主張された場合は、「危険を防止するためやむを得なかった事情」を証明する必要があります。

 

まとめ

被害者が完全に停止しているからといって過失割合が「0」かといえば、必ずしもそうではない場合があることはお分かりいただけたかと思います。車を停止させる際も交通ルールを守ることが何より基本となります。

                                    
                                     以上

 

相手方に言われて...交通事故で被害届を出さないことのリスク

今日は交通事故で被害に遭った方の話を聞いていると時々耳にする、交通事故で被害に遭ったのに、加害者に言われて被害届を出さなかったというケースについてそのリスクを説明します。 先に結論から言っておきますが、加害者に言われたからといって被害届を出さないというのは絶対にやめておきましょう。  

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交通事故には物損事故と人身事故がある

交通事故には物損事故という、単に物を壊しただけの事故と、人にケガをさせてしまった人身事故の2つの種類があります。 物損事故の場合、刑事処分の可能性は低いのですが、人身事故の場合には刑事処分の可能性もあり、仮に刑事訴追されなくても免許へ科される処分というのは物損事故より重くなります。 参考までにご紹介すると、一方的な不注意で全治一ヶ月くらいのケガを被害者にさせてしまった場合、9点の違反点数がつく可能性があります。この9点というのは違反歴の無い人でも30日間の免許停止処分になってしまう可能性があるほど重い処分になります。  

交通事故の現場での交渉には要注意

さて、このような処分の可能性があるとなると、日常的に自動車を運転する人や仕事に車が必須という人にとっては、運転免許停止処分というのは一大事です。仕事ができなくなることを意味するため、なんとしても避けたいところです。 また、仕事で自動車を運転する人ほど違反歴のある人が多く、今度違反したら免許停止になってしまうという人も少なくありません。 ここで、こうした加害者の立場になってあなたと交通事故を起こしたと想像してみてください。加害者としてはなんとしてもあなたに被害届を出すのを思いとどまってほしくなりますよね。 実際に、こうした事例というのは後を絶ちません。中には高額な示談金をその場で提案されたために、その要求に応じてしまう人も少なくありません。 金銭的にトクするんだから良いじゃ無いかと思う人もいるかもしれませんが、こうした事故現場での示談や交渉に応じるのは以下のようなリスクが考えられます。  

保険会社からの保険金や示談金は受け取れない

人身事故として被害届けを出さないということは保険会社からの保険金などは基本的に受け取れません。なぜなら公的に人身事故が発生したという証拠が無いからです。 したがって、こうなると加害者がちゃんと示談金を支払ってくれないと、補償は無い状態になってしまいます。  

加害者が本当にいった金額を支払ってくれるとは限らない

交通事故の現場で高額な示談金を提示されても、それを証明する方法というのは持っていない場合がほとんどです。 結局証拠が無いため、相手方改めて提示してきた示談金の額になる場合は少なくありません。  

そもそも加害者が分からなくなってしまった

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最悪のケースはそもそも加害者と連絡が取れなくなってしまいケガをしただけになってしまうケースです。相手から連絡先を聞いたとしても、それが本当とは限りません。事故が起きてすぐに保険会社などに連絡すれば、保険会社を頼りに相手を特定できますし、加害者が払ってくれなくても保険会社が払ってくれます。 しかし、被害届を出さないとそれもできません。後から被害届を出せば良いと思われるかもしれませんが、加害車両も無い状態で被害届を出されても警察も対応に困るだけです。   以上のようなことから、交通事故の現場で被害届を出さないように依頼されたり示談を持ちかけられ、これに応じるというのは非常にリスクの高い行為です。どんなに良い条件をそこで持ちかけられても、それが守られるという保証はどこにもありません。 それどころか事故があったかどうかもあやふやになってしまう非常に危険な行為である事を認識しましょう。

専業主婦でも大丈夫?休業損害について

前回は示談金の内訳について説明しました。そこで、今回は示談金のうち休業損害の部分について解説していきたいと思います。というのも、休業損害という言葉を聞いて、専業主婦だからもらえないものだと思っていたという方や休業損害についてよく分からないで保険会社に任せていたせいで、本来よりも少なくなってしまったという方を見かけることが少なくありません。 そこで、今回は休業損害について詳しく説明したいと思います。  

休業損害とは?

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前回少しお話ししましたが、休業損害とは交通事故によってケガをしてしまい、これによって仕事を休むなどして収入が減ってしまった場合の損害のことをいいます。 給与所得者であれば本来もらえるはずだった給料から減ってしまった部分が損害になりますし、自営業の方であれば去年の収入や売り上げを基準として、そこから減ってしまった部分を損害として考えることになります。  

有給と休業損害について

給与所得者つまり会社員の方などの場合、交通事故に遭ってケガした場合には有給を使って病院へ通院する方などもいらっしゃるでしょう。この場合、給料は減っていないことから休業損害はないと考えてしまう方もいます。 ですが、これは誤りです。有給というのは、それ自体が労働者の権利であり、本来は自由な時期に行使できるものです。それを交通事故のケガによって行使せざる得なくなった訳ですから使った有給の分だけ損害が発生しているという事になります。 実際に裁判例もこのような立場を取っており、大阪地方裁判所平成13年11月30日の判決では、有給休暇を使用した場合でも休業損害があると認めています。 このように、有給休暇を取っても休業損害は発生しますので、不安な方はどうすれば良いのか専門家に相談してみるのも良いでしょう。  

主婦と休業損害

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さて、有給休暇を取得した場合でも休業損害が認められることについて見てきましたが、専業主婦の場合にはどうでしょうか? 働いていない以上、収入がないのだから休業損害は無いと思われる方も少なくないのではないでしょうか。 しかし、それは誤りです。というのも、専業主婦が行う家事は確かに給与は発生しませんが、仮にそれを人にやってもらおうと思ったら当然お金が発生します。 自分の家での事だから誰も給料を払わないだけで、本来はお金が発生する立派な労働です。こうした考えに基づき、専業主婦の方にも休業損害を認めているのが現在の法律上の考え方です。

どうやって計算するの?専業主婦の休業損害

では、給料というものの無い専業主婦の方の休業損害はどのように計算するのでしょうか。 一般に専業主婦の方の場合には、その給与は全女性の平均賃金と同価として評価されます。 したがって、事故が発生した当時の「女性・学歴計・年齢計」の平均賃金額(平均賃金は、厚労省「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)というものを基礎とします。)を年収とし、これを365日で除した額が家事労働の日額給与額になります。 分かりにくいので、具体例で説明すると、平成30年に事故が起きた場合だと、同じ年、つまり平成30年の女性・学歴計・年齢計の平均賃金額を見て、それを365日で割った金額が家事労働の日額給与額になるという計算をします。 このように専業主婦の場合であってもしっかりと日給というものが計算されるため、交通事故によって家事ができなくなった期間分は休業損害が発生するということになります。  

休業損害について悩む前に専門家へ相談を

いかがでしょうか?交通事故に遭った際に多くの方は仕事を休んだりしなければいけなくなる場合が多く、それだけに休業損害というのは非常に重要な問題です。有給を使って大丈夫なのか、どの範囲まで休業損害として認められるのかなど気になる点は多いはずです。悩まれる前に是非司法書士や弁護士にご相談ください。

示談金とは?知っているようで実は知らない示談金の中身について

今日はタイトルにもあるように示談金について解説したいと思います。というのも、示談金という言葉はみなさんよく耳にされるでしょうが、実際にその内容について詳しく聞いたことのあるという方は少ないのではないでしょうか?

実際に被害あった方も何が保険の対象外で、どれが対象内という説明を受けるだけで結局よく分からないままに終わってしまったという方も案外多いのではないでしょうか?

自分が被害に遭ったときに、示談金の交渉は保険会社と弁護士や司法書士が行うことになるでしょうが、ご自身で知っておくことで事前の相談もスムーズに行きますし、結果にも納得がいきやすいと思います。

 

示談金の法的根拠について

 

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まずは交通事故における示談金の法的な根拠から整理しておきましょう。

前提として、交通事故で被害に遭った人は加害者に対して損害賠償する権利を持ちます。これを法律的にいうと不法行為に基づく損害賠償請求権といいます(民法709条)。

したがって、被害者の方は交通事故で生じた損害を加害者に対し請求する裁判を起こすことも可能です。しかし、裁判というのは時間や費用がかかりますし、被害者は交通事故でケガをしている場合も多いため、そんな状態で裁判をするというのは現実的ではありませんし、負担が大きすぎます。

そこで保険会社を間に入れて、当事者間で裁判にしないで交通事故について当事者間で金額について話し合って、早期に解決しようということになりました。(法律的には和解契約といいます。)

つまり、示談金とは交通事故によって生じた損害について、被害者と加害者の間で話し合い(示談)を行い、合意した金額で解決を図ろうというものです。その際に合意した金額というのが示談金の金額になります。

 

示談金の内容について

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示談金は上で説明したように、当事者間で合意した金銭なので理屈の上では何でも対象にすることが可能です。しかし、元々は不法行為に基づく損害賠償請求権の金額を当事者間で話し合って決めるものなので、やはり損害賠償請求を裁判で起こしたとしても認められるものが基本になります。

さて、そんな示談金ですが、内訳を見ると次のようになっています。なお、物損事故か人身事故かによって多少変わりますが、ここからは人身事故を前提に説明します。

 

治療費、通院交通費

当然ですが人身事故でケガをすれば病院に行く必要があります。これは交通事故のせいで生じたものですから当然示談金の対象になります。また、通院する際に発生する交通費も当然含まれることになります。

診断書発行費、文書料

交通事故にあうと様々な文書や書類を作成し提出する必要が出てきますが、その際に発生した費用も示談金の対象となります。

 

休業損害

交通事故によってケガをした場合、仕事を休まなければいけなくなることも少なくありません。こうした場合に休むことによって収入が減ってしまった部分は当然示談金の対象になります。

 

入院・通院慰謝料

入院や通院によって発生する精神的苦痛に帯する慰謝料です。

 

付添看護料

これは被害者本人の損害ではありませんが、症状によっては近親者が付き添う必要があり、こうした場合には付き添うために休んだ部分の侵害を対象として発生します。

 

後遺障害慰謝料

後遺症が残った場合には、後遺症が残ってしまったことに対する精神的苦痛に対するものとして認められています。

 

後遺傷害逸失利益

後遺症によって仕事に支障をきたすなどし、本来得られるはずであった利益が失われた場合に認められます。

 

以上のようなものが示談金の対象になってきます。このほかにもケースバイケースで含まれるものなどもあるので、示談金の内容に不満がある場合には、是非相談に来られてください。

司法書士が受任可能な簡易裁判所の事件について

裁判所で行われる事件については代理人は原則として弁護士が行います。他方で、簡易裁判所に係属する事件については、司法書士も受任が可能になっており、こうした受任が可能なことが司法書士の交通事故に関する業務を受けることができる根拠となっています。

しかし、簡易裁判所と聞いてもピンと来る方というのはかなり法律に詳しい方に限られるでしょう。

そこで、今日は簡易裁判所の事件について解説していきます。

 

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簡易裁判所とは?

簡易裁判所とは、日常的に発生する法律問題を簡易・迅速に解決するために設置された裁判所です。全国438カ所に設置されており、最も身近な裁判所とされています。

日常的に発生する法律問題などを解決することを目的にした裁判所なので、扱える事件が限定されているというのがその特徴です。

 

;簡易裁判所で取り扱われる事件について

簡易裁判所で扱われ事件は以下のものになります。

①訴訟価額が140万円以下の請求(行政事件訴訟に係る請求を除く)

②罰金以下の刑(他には拘留、科料)にあたる罪

 

他方で、司法書士が扱うことができるものについては以下のように定められています。

“簡易裁判所において取り扱うことができる民事事件(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)等について,代理業務を行うことができます。 

簡裁訴訟代理等関係業務とは,簡易裁判所における(1)民事訴訟手続,(2)訴え提起前の和解(即決和解)手続,(3)支払督促手続,(4)証拠保全手続,(5)民事保全手続,(6)民事調停手続,(7)少額訴訟債権執行手続及び(8)裁判外の和解の各手続について代理する業務,(9)仲裁手続及び(10)筆界特定手続について代理をする業務等をいいます。“

(法務省ホームページより抜粋)

 

したがって、上記の①と②のうち、司法書士が扱うことができるのは①のみになります。なお、請求額が140万円以下になる民事事件であれば上記に該当することになるので、例としては貸金を請求する場合や、交通事故の示談金を請求する場合、代金の支払いを求める場合などがあげられます。

 

その他の簡易裁判所の特徴

簡易裁判所は前述の通り、簡易迅速な解決のために設置されているものなので手続きについてもいくつか特別なルールがあります。

①訴えの提起は口頭で可能

普通の裁判所は訴え提起の際に裁判所に書面を提出する必要がありますが、簡易裁判所の場合には必要ありません。

 

②請求の原因は紛争の要点を明らかにすれば良い

これは少し分かりにくいかもしれませんが、普通の裁判では訴えを提起する側で訴えの内容の根拠を示し、どのような請求をしているのか裁判所に示す必要があります。例えば、貸したお金を請求するのであれば、いついくら貸したお金なのか、支払期限はいつだったのかなどしっかりと特定しなければいけません。

こうした点について訴える側の負担を軽減するために設けられているルールです。

 

司法書士なら誰でも受任可能?

さて140万円以下の示談金請求なら司法書士には誰にでも任せて良いかというとそんなことはありません。

受任可能なのは認定司法書士と呼ばれる法務大臣の認定を受けたものに限定されます。これ以外の司法書士に頼んでも、裁判の代理人になることはできないので示談金について交渉することはできません。

なので、交通事故について司法書士に相談する際には必ずその司法書士が認定司法書士なのかと言う点については必ず確認しておきましょう。

 

交通事故に遭った際には専門家へ相談しましょう

交通事故に遭った際には、ケガなどによって精神的にも肉体的にもダメージを受けます。そのため、示談金について保険会社との交渉を行うというのは負担が重すぎます。

示談金の額が上がることも考え、司法書士や弁護士などの専門家に相談しましょう。