交通事故で後遺障害を負ってしまったとき、保険をどう役立てるべきか?

 

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交通事故の被害者になってしまった場合、後遺症が残ると生活や治療費など、多くの不安を抱えることになってしまいます。

前回の記事では自動車保険の役割についてお話ししましたが、今回は「後遺障害」について詳しく解説したいと思います。

 

[後遺障害とは何か?]

交通事故でケガをしてしまった場合、一定期間の治療をして完治するケースと、しないケースがあります。

後者を「後遺症」と呼びますが、後遺症の中でも自賠責保険の後遺障害等級表のいずれかに当てはまり、且つ以下の定義に該当すると認定されたものを「後遺障害」と呼びます。

【後遺障害の定義】

①交通事故によって受けた精神・肉体的な傷害が存在する

②交通事故によって受けた傷害が、将来に渡って回復の見込めない状態である

③交通事故とその症状固定状態との間に、因果関係が認められる

④傷害の存在が医学的に認められる

⑤労働力の喪失を伴う状態である

⑥傷害の程度が、自賠責法施行令の等級に該当する

このように後遺障害は、後遺症の中でも特に厳密な規定が設けられており、治療費や休業補償、入通院慰謝料とは別に損害補償の対象となります。

 

 [自賠責保険にできること]

被害者の保護を目的としている自賠責保険では、後遺症が残った被害者に速やかに補償がなされるよう、個々の後遺症の程度を分類するための基準を設けています。

その基準を一覧にしたのが「後遺障害等級表」で、先ほどご説明した後遺障害認定の基準となります。

後遺障害等級表は後遺障害を16等級に区分し、さらに142項目に細分して被害者の障害の程度を判断していきます。

自賠責保険ではこの等級表に基づいた認定が損害賠償請求の基礎となるため、いかに傷害の実情に合った等級に認定してもらえるかで、適正な賠償を受けられるかが決まります。

なおこの認定基準は労災の認定基準に準じており、詳細は『労災補償障害認定必携』で確認することができます。

 

[任意保険にできること]

【その1:一括払い】

自動車事故に遭ってしまった場合、任意保険会社は加害者に代わって、被害者への損害賠償の支払いをしてくれます。

その際自賠責保険で支払われるべき補償も任意保険会社が一旦肩代わりをして、全額まとめて被害者側へ支払います。

このまとめて支払うサービスを「一括払い」と呼び、任意保険会社は治療費などを直接医療機関へ支払います。

一括払いのサービスを利用すると、被害者は自賠責保険会社と任意保険会社の双方に個別で請求をする手間が省けるうえ、治療費などの負担を立て替える必要もありません。

一方で加害者側も、任意保険会社が窓口になってくれるので、素人知識でトラブルに巻き込まれる心配がなくなります。

一括払いサービスは、被害者保護加害者保護両方の観点で優れたサービスです

 

【その2:事前認定】

交通事故で傷害を負ってしまった場合、上記のように「一括払い」を利用して治療を続けても、完治せずに後遺症が残ることがあります。

後遺症が残った場合は、後遺障害の認定基準に基づき後遺障害等級認定を受けて、損害賠償額を算定する必要があります。

任意保険会社から一括払いのサービスを受けている場合は、そのまま任意保険会社が後遺障害等級認定の手続きを行ってくれます。

これを「事前認定」と呼び、被害者は申請に必要な書類や資料を自分で揃える必要はありません。

 

ただし被害者の中には「加害者の加入している保険会社では信用できない」という不安を抱く方もいます。

そのような場合は、後遺障害等級認定の手続きを被害者自身で行う「被害者請求」という方法もあります。

 

後遺障害になると、損害賠償請求に必要な等級認定手続きなど、専門的な知識を必要とする場面が出てきます。

交通事故で後遺障害を負ってしまった場合は、専門家への相談も視野に入れることをおすすめします。