【獲得事例も紹介】通院していない場合も休業損害は認められる?請求可能な条件と相場・計算方法について(後半)

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休業損害の計算方法につい

ここでは休業損害の計算方法を説明します。
基本的には下記のような計算式により休業損害を算出します。

 

休業損害=1日当たりの基礎収入×休業日数

 

1日当たりの基礎収入は、給与所得者については交通事故の3か月分の収入の平均で算出することが一般的です。
個人事業主などは、直近の確定申告書の年間所得等から基礎収入を計算します。

基礎収入の算定のために、給与所得者であれば休業損害証明書を勤務先に作成してもらう必要があります。個人事業主の場合は前年度の確定申告書の控えが必要です。

休業損害証明書には交通事故前3か月分の休業日数とその間の給与額が示されています。この記載に基づいて交通事故前3か月の合計の給与額を算出して、それを90で割ると1日当たりの基礎収入が算出できます。

具体的な休業損害の計算方法の例示を見てみましょう。

 

給与所得者の場合

交通事故前の月収が30万円、事故による休業日数が50日だった場合を考えてみましょう。
1日当たりの基礎収入は、以下のように計算されます。
30万円×3か月÷90日=1万円


これに休業日数を乗じて、この会社員の休業損害は、以下のように算出されます。
1万円×50日=50万円

 

したがって、この事例の会社員の休業損害は50万円と計算できることになります。

 

個人事業主の場合

次に自営業の方の休業損害を見ていきます。

前年不度の所得と固定費の合計額が500万円の個人事業主について、交通事故による受傷が原因で休業した日数が30日間の場合を考えてみましょう。
1日当たりの基礎収入は以下の計算式で算出されます。

 

1日当たりの基礎収入=前年度の所得及び固定費÷365日


したがって、この個人事業主の方のケースでは、
1日当たりの基礎収入=500万円÷365日=1万3,698円
計算されます。

そして、このケースでの休業損害は以下のように算定されます。
1万3698円×30日=41万940円

 

以上より、このケースの個人事業主の方の休業損害は41万940円と算出されます。

 

専業主婦・主夫の場合

専業主婦・主夫の場合の休業損害の計算について解説していきます。

専業主婦・主夫の1日当たりの基礎収入は、「賃金センサス」をもとに算出します。


「賃金センサス」とは、厚生労働省より公表されている「賃金構造基本統計調査の統計資料」のことをいいます。

 

この賃金センサスをもとに全年齢の女性の平均賃金がいくらであるかを確認します。その年収を1年365日で割ることで専業主婦の1日当たりの基礎収入を割り出すことができます。
そして、入通院などを行った日数をかけることで休業損害が算出できます。

それでは具体的な事案をみてみましょう。

専業主婦の方が交通事故に遭い、休業日数が20日間であった場合を考えていきましょう。

 

賃金センサスをもとに女性の平均年収をみてみます。
2018年の女性の平均年収は、382万6300円です。


そこで、この専業主婦の方の1日当たりの基礎収入は以下のように計算されます。
1日当たりの基礎収入=382万6300円÷365日=1万483円

 

そして、この方の休業損害は以下のように計算します。
休業損害=1万483円×20日=20万9660円

したがって、このケースでの専業主婦の方の休業損害は20万9,660円となります。

 

アルバイト・パートタイム従業員の場合

次にアルバイトやパートタイム従業員の場合の休業損害の計算方法を解説していきます。

この人は、1か月10日勤務で、交通事故前の月収が15万円であったと仮定します。
この方の休業日数が15日間であった場合について考えていきましょう。

1日当たりの基礎収入は以下のように算出されます。
1日当たりの基礎収入=15万円÷10日=15,000円

 

そして、この方の休業損害は以下のように計算されます。
15000円×15日=22万5,000円

 

したがって、この方の休業損害は、22万5,000円となります。

 

会社役員の場合

交通事故の被害者が会社役員であった場合には、休業損害はどのように計算されるのでしょうか。
会社役員が受け取っている役員報酬は就労に対する対価ではありません。就労日数の多寡で変動する性質のものである可能性もあります。
上記のような場合には休業損害は発生していませんので、経営者は加害者に休業損害を請求することができません。

しかし、会社役員でも休業により何らかの減収が生じる可能性はありますので、そのような減収分については休業損害として請求できるでしょう。
会社役員の方が休業損害を請求できるか否かは個別具体的な事情によることになると思います。

 

無職者の場合

被害者が何ら仕事をしておらず収入を得ていない場合には、原則として休業損害は検討できません。
しかし、交通事故の時点で仕事をしていないとしても、企業から既に内定をもらっていた場合や就職することが決まっていた場合、就職先は決まっていなかったが就職活動中であるような場合には例外として扱われる可能性があります。
つまり、上記のような場合には就労により収入を得られる可能性が高かったということで、休業損害を検討する余地があるからです。

 

認められなかった休業損害を獲得した事例

交渉当初には認められなかった休業損害を、弁護士が交渉したことで80万円以上回収することに成功した事例を紹介します。

ある依頼人は、自動車で走行中に後方から別の自動車に追突され、頭部打撲に頸椎捻挫を負いました。1年半の通院の結果、症状固定と診断されましたが、首や頭の痛み、めまいや吐き気等の症状が残りました。
後遺障害については14級9号の等級認定がなされました。休業損害については依頼人が自営業で交通事故の後にも減収がなかったため、加害者側の保険会社は休業損害を認めませんでした。
依頼を受けた弁護士は、依頼人の後遺症による会社への損害は大きく、休業損害が認められないのであれば訴訟を提起せざるを得ないと粘り強く交渉を継続しました。

弁護士が交渉を継続した結果、休業損害が80万円以上支払われました。そのほか、後遺障害の逸失利益も116万円以上回収でき、賠償額の合計としては560万円以上で示談を成立させることができました。
保険会社は交渉当初には治療費の150万円しか認めていなかったため、400万円以上増額できたことになります。

このケースのように、症状固定したあとに後遺障害が残っている場合には、後遺障害等級認定の申請をして認定されると後遺症慰謝料や逸失利益という賠償金を受け取ることができます。それらの複雑な手続も弁護士に依頼することで一任することができます。

 

まとめ

今回は休業損害について職業別に計算方法などを解説しました。

一人で悩まず、専門家である弁護士に相談しましょう。
弁護士に依頼することで被害者の負担は大きく軽減されるに違いありません。