【交通事故と中心性脊髄損傷①】中心性脊髄損傷と判断されたときの後遺障害等級

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交通事故に遭った場合に中心性脊髄損傷という怪我を負うことがあります。
これは症状も非常に重く、今後の生活に大きな影響を与える可能性がありますので今回は中心性脊髄損傷を負ったケースについて詳しく解説していきます。

 

中心性脊髄損傷とは

「脊髄(せきずい)」とは脳から背骨の中を通る神経のようなものです。
脊髄が損傷してしまうと二度と元には戻らず、損傷部分から下の部分には麻痺が残ってしまいます。
脊髄の損傷範囲が広範囲になるほど麻痺の範囲も広範囲になると言われています。

 

上記のような症状のある状態を「重度脊髄損傷」といいます。

脊椎を損傷した場合には意識は明瞭でも手や足を動かすことができなくなるため、寝たきりまたは車いすでの生活を余儀なくされます。
さらに肺機能障害や体温調節障害など全身に様々な不調が起こる可能性も高いですので、介護が必要になります。
自宅の改造費や介護用品の費用も高額になる可能性がありますので被害者の負担はかなり大きくなります。

 

脊髄損傷には首の骨や背骨に損傷がなくてもその内側の神経部分である脊髄に損傷を受ける場合もあります。その結果、上肢の麻痺や膀胱や直腸の後遺障害が残ることがあります。
損傷の箇所により失われる機能の場所が異なります。これらは中心性脊髄損傷(中心性頚髄損傷)と呼ばれています。
中心性脊髄損傷は外傷が軽微と判断されやすく、またX線撮影を実施しても画像に現れにくいため軽い頸椎捻挫などと判断されてしまうこともあります。
そのため被害者の方は必要な治療を受けられない状態が続くことがあります。

中心性脊髄損傷を専門とする医師に診断してもらい状態を明確にする必要があります。

 

中心性脊髄損傷の損傷部位や症状

次に中心性脊髄損傷の損傷部位や症状を種類別に説明していきます。

頚椎損傷の場合

頚椎損傷とは、首の部分を通っている脊髄神経が損傷を受けることをいいます。
脊椎損傷では、胸から下部の体幹部が麻痺するため動かせなくなります。
損傷したのが頚椎のどこかによって両手の可動に影響が出てきてしまいます。

例えば頚椎の下の方の損傷では自力で車いすを漕ぐことができます。
しかし頚椎の上の方を損傷すると指や手の運動が難しくなりますし、排せつもできなくなります。

胸椎損傷の場合

胸椎損傷とは、胸部の脊髄神経が損傷を受けることをいいます。
胸椎損傷では、損傷した胸椎の箇所がどこかによって体幹の動きに対する影響が異なってきます。

損傷部位より下部には麻痺が残るため身体の動きに影響が出てきますが、この部位の損傷は手を動かすことができるので、車いすを漕ぐことは可能です。
また、排せつはできなくなります。

馬尾損傷

馬尾損傷とは、腰椎の損傷の一種です。
最も下部の脊髄の損傷のことを馬尾損傷といいます
この馬尾損傷によって、下半身の全部に麻痺が残るということはありません。

損傷した場所によっては下半身の一部に麻痺が残る可能性はあります。
また、損傷した部位によって排せつについても不自由になる可能性があります。

 

中心性脊髄損傷と判断されたときの後遺障害等級

次に中心性脊髄損傷と診断された場合の後遺障害が何級に認定されるのかについて症状ごとに説明していきたいと思います。

頚椎損傷

頚椎損傷は別表1の第1級に該当します。自賠責保険上、最大で4000万円の保険金が給付されます。
第1級は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」が認定基準です。
具体的には、以下の状態が認められるものです。

  1. 高度の四肢麻痺が認められるもの
  2. 高度の対麻痺が認められるもの
  3. 中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
  4. 中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便。更衣等について常時介護を要するもの

胸椎損傷

胸椎損傷は、上記で説明した頚椎損傷と同様、第1級「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」に該当します。自賠責保険上最大で4000万円の保険金が給付されます。

馬尾損傷

馬尾損傷の場合には、麻痺の症状に応じて、別表2の3級、5級、7級、9級のいずれかの後遺障害等級の認定がされることが多いです。
等級に応じてそれぞれ自賠責保険上、最大2219万円、1574万円、1051万円、616万円の保険金が給付されます。

3級は、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」が認定基準です。
5級は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」が認定基準です。
7級は「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」が認定基準です。
9級は「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限」