【交通事故と中心性脊髄損傷②】後遺障害の認定を受けるためにしておくべきこと

前回から交通事故と中心性脊髄損傷について解説をしています。

今回は、中心性脊髄損傷により後遺障害等級認定を受けるために被害者がやるべき行動についてみていきます。

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後遺障害の認定を受けるためにしておくべきこと

具体的に説明していきます。

MRIで画像を撮影しておく

早期の段階から詳しい検査を受けておく必要があります。脊髄損傷における後遺障害等級認定では脊髄損傷を直接的に証明する医学的な根拠としてMRIにより撮影された画像が重要です。
どうしてMRIによる画像が必要かというと骨折を伴う損傷のような場合であれば、レントゲン撮影によっても損傷の場所を確認することが可能です。

 

しかし、中心性脊髄損傷のような必ずしも骨折を伴わない損傷の場合には脊髄の過屈曲や過伸展が原因で生じます。
したがって、脊椎の骨折がない場合には損傷部位を見逃されやすいという特徴があります。
そこで、神経や血管、椎間板などの人体の軟部組織を撮影するためのMRIによる画像が重要になってきます。
交通事故直後にはなるべく早い段階からMRIによる撮影と画像による判断を受けておくことが後遺障害等級認定を獲得するためには重要な点です。

 

また、ひとくくりにMRIによる画像撮影といっても、解像度は機器により異なります。
そこで、このように診断能が低いMRI撮影の場合には腕や手指の上肢に麻痺やしびれがあったとしても、むち打ち症だろうと診断されてしまい、脊髄損傷が看過されてしまうリスクがあります。

 

MRIの診断能力はテスラという単位で表現されますので、MRIの診断能を確かめたい場合にはこの単位をあらかじめ調べておくべきでしょう。

神経症状テストを受けておく

後遺障害等級認定に必要な神経症状テストを受けることが重要です。
なぜかというと、運動障害や麻痺、痛みなどは自覚症状ですが、神経症状テストを受けることでその自覚症状を他覚症状として表現することができるからです。

 

それでは神経症状テストにはどのようなものがあるのでしょうか。
以下で具体的に説明していきます。

 

(1)反射テスト

反射テストとは、肘や膝などの腱に小さな刺激を与え、腱反射が正常に生じるか否かを調べる検査です。
脊髄に損傷がある場合には刺激に対する腱反射が通常よりも大きくなります。

また、脊髄に損傷がある場合には病的な反射も見られるようになります。
上肢に関しては、ホフマン反射やトレムナー反射と呼ばれる反射が現れ、下肢についてはバビンスキー反射とクローヌス反射などが現れます。

脊髄が損傷することで人間が本来具備している反射に対する抑制作用が阻害されるという状態が生じている可能性があります。
したがって、上記のような反射テストを行うことで被害者の方の意識に影響を受けずに脊髄損傷の有無について検査することができます。

 

(2)徒手筋力テスト

徒手筋力テストとは、筋力が低下している程度を調べるための検査です。
脊髄が損傷を受けると、神経が麻痺などの障害を受けるので、その神経を通って制御している筋肉を動かすことができなくなります。
したがって、使うことができなくなった筋肉の筋力が低下してしまいます。
そこで筋力低下の程度を知るために徒手筋力テストが有効です。

 

(3)筋萎縮検査

筋萎縮検査とは、左右の手足の周囲径の数値を図る検査です。
脊髄が損傷を受けると神経が麻痺し、その期間が長くなると筋力が低下します。筋力が低下すると筋肉が小さくなるのでやせ細って委縮してしまいます。
そのような筋肉の減少を検査するためには筋萎縮検査が有効です。

 

(4)知覚検査

知覚検査は触覚や痛覚、温度への感覚、振動への感覚、位置感覚に対して異常がないか否かを検査するテストです。

 

(5)手指巧緻運動検査

手指巧緻運動検査とは、箸を満足に使用して食べ物を運ぶことができるか、衣服のボタンをかけたり外したりすることができるか、衣類や靴の紐を結んだり程いたりすることができるか、ペンや筆を使って満足に文字を紙面上に書くことができるかなどの手指の細かい作業・動作がどのくらい満足にできるかどうかをテストする検査です。

 

専門の医師の診断を受けておく

脊髄損傷という障害は交通事故による受傷の中でも最も重症な怪我のひとつです。
後遺障害等級の認定を得るために症状を証明していくことは容易ではありません。
必要であれば様々な証拠を提出する必要も生じてきます。
前述のとおり、交通事故に遭ったあとはなるべく早い段階でMRIによる画像撮影をし、事故当初の医師の判断を得ておくことはその後の後遺障害等級を申請するにあたり重要となります。

 

中心性脊髄損傷は必ずしも骨折などを伴わないので当初の診断で見落とされる可能性が高い症状です。
手や指を動かして行う作業が難しい場合や、腕や足にしびれがあるような場合には脊髄損傷が疑われます。
また、前述のように神経症状テストを実施した結果、テストの結果が悪い場合には脊髄損傷が生じている可能性が高いです。

以上の点から、中心性脊髄損傷を負って後遺障害等級認定を受けるためには専門の医師による診断を受けることが重要であることに加え、高い精度と解像度のあるMRI設備を有している病院で診察してもらうことがポイントです。