交通事故で後遺症を負った場合に被害者が受け取ることができる慰謝料にはどのような種類があるのでしょうか。
交通事故で中心性脊髄損傷を負ったときにもらえる慰謝料
慰謝料の種類別に解説していきます。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は傷害慰謝料ともいいます。
入通院慰謝料とは、交通事故が原因で負傷しその結果入通院したことに対する精神的損害を補填するために支払われる損害賠償金です。
慰謝料の算定のためには(1)自賠責保険基準、(2)任意保険基準、(3)弁護士基準の3つの基準があります。
(1)自賠責基準は、被害者を救済する観点から自動車を運転する人に加入が義務付けられている自賠責保険の基準です。
被害者への最低限度の補償として法律が定めたものですので、金額も最低限度の水準です。
自賠責保険の入通院慰謝料は、次の2つの計算方法で計算した上で金額が少ない方が適用されます。
4200円 × 通院期間
4200円 × 通院日数 × 2
たとえば、月10日の通院を6か月続けた場合の慰謝料計算は次のようになります。
(1)4200円×30日×6ヶ月=75万6000円 (2)4200円×実通院日数10日×6ヶ月×2=50万4000円
上記計算式から金額の少ない(2)の計算式が適用されます。
よって、このケースでは入通院慰謝料は50万4000円です
(2)任意保険基準は、任意保険会社が保険金を計算するために定めている基準です。
任意保険会社が被害者と示談交渉をする際に利用される基準です。
交通事故の示談交渉の多くは被害者自身が保険会社相手に行うので、任意保険基準が適用されて慰謝料が算定されることが多いです。 任意保険基準は、自賠責保険基準よりは高く設定されていることが多いですが、裁判上被害者に認められた権利としての慰謝料と比較すると低めに設定されています。
保険会社によって基準の内容は変わってきますが、以下の表は任意保険基準の大体の目安としての相場になります。
任意保険基準により入通院慰謝料(単位:万円)
0か月 | 1か月 | 2か月 | 3か月 | 4か月 | 5か月 | 6か月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0か月 | 0 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 128.5 |
1か月 | 12.6 | 37.8 | 68 | 85.7 | 104.6 | 121 | 134.8 |
2か月 | 25.2 | 50.4 | 73.1 | 94.5 | 112.2 | 127.3 | 141.1 |
3か月 | 37.8 | 60.5 | 81.9 | 102.1 | 118.5 | 133.6 | 146.1 |
4か月 | 47.9 | 69.3 | 89.5 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.1 |
5か月 | 56.7 | 76.9 | 95.8 | 114.7 | 129.8 | 143.6 | 154.9 |
6か月 | 64.3 | 83.2 | 102.1 | 119.7 | 134.8 | 147.4 | 157.4 |
(3)弁護士基準とは、裁判例によって認められた金額に基づいて設定された基準です。
金額的には上記3つの基準の中で最も高い基準になっています。
ただ、弁護士に依頼して示談交渉を行う場合や訴訟を提起して慰謝料請求するような場合に適用される基準ですので注意が必要です。
弁護士基準の場合は症状の程度によって算定金額が異なりますが、骨折等の比較的重症の場合の慰謝料については以下の表のようになります。
重症の場合の入通院慰謝料(単位:万円)
0か月 | 1か月 | 2か月 | 3か月 | 4か月 | 5か月 | 6か月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0か月 | 0 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 |
1か月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 |
2か月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 |
3か月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 |
4か月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 |
5か月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 |
6か月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 |
参考元:民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準
後遺障害慰謝料
交通事故が原因で後遺障害が残った場合には、入通院慰謝料と併せて損害保険料率算出機構から後遺障害認定を受けることで、後遺障害慰謝料の請求ができます。
後遺障害慰謝料とは、交通事故が原因で負傷し、将来にわたり完治しない後遺障害が残ってしまった場合にそのことに対する精神的損害を填補するために支払われる損害賠償金です。
後遺障害申請では、後遺症の種類やその状況の度合いによって、14の等級が存在しています。1級が最も重く、14級が最も軽い等級になります。
後遺障害慰謝料の金額は認定された等級に応じて決定されることになります。
入通院慰謝料と同じように3つの基準ごとに慰謝料相場が定められています。
それでは、3つの基準それぞれの慰謝料額を見ていきましょう
後遺障害慰謝料は、どの基準でも等級ごとに慰謝料が定められています。なお任意保険基準は各保険会社で基準が異なりますので推定値になります。
等級 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
第14級 | 320000円 | 400000 | 1100000円 |
第13級 | 570000円 | 600000円 | 1800000円 |
第12級 | 940000円 | 1000000円 | 2900000円 |
第11級 | 1360000円 | 1500000円 | 4200000円 |
第10級 | 1900000円 | 2000000円 | 5500000円 |
第9級 | 2490000円 | 3000000円 | 6900000円 |
第8級 | 3310000円 | 4000000円 | 8300000円 |
第7級 | 4190000円 | 5000000円 | 10000000円 |
第6級 | 5120000円 | 6000000円 | 11800000円 |
第5級 | 6180000円 | 7500000円 | 14000000円 |
第4級 | 7370000円 | 9000000円 | 16700000円 |
第3級 | 8610000円 | 11000000円 | 23700000円 |
第2級 | 99800000円 | 13000000円 | 23700000円 |
第1級 | 11500000円 | 16000000円 | 28000000円 |
死亡慰謝料
交通事故によって被害者が死亡した場合は、遺族が慰謝料請求を行います。
死亡した被害者の慰謝料のほか、遺族固有の慰謝料についても請求することができます。
自賠責保険基準による死亡慰謝料は被害者本人の慰謝料と遺族固有の慰謝料の2つを合計して計算します。
被害者本人の慰謝料は「損害賠償額算定基準2020(令和元)年版」という本では一律400万円とされています。
遺族の慰謝料については請求権者によって変動します。
ここで慰謝料を請求できる遺族は、被害者の父母、配偶者、子どもに限定されています。
慰謝料を請求できる遺族の人数 | 慰謝料額 |
---|---|
1人 | 550万円 |
2人 | 650万円 |
3人 | 750万円 |
任意保険基準と弁護士基準での死亡慰謝料の相場は以下のようになります。
慰謝料の金額は被害者が家庭内でどのような属性の立場であったのかによって異なります。
死亡者の属性 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
一家の支柱 | 1500万円~2000万円 | 2800万円 |
配偶者等 | 1300万円~1600万円 | 2500万円 |
子ども・高齢者等 | 1100万円~1500万円 | 2000万円~2500万円 |