専業主婦でも大丈夫?休業損害について

前回は示談金の内訳について説明しました。そこで、今回は示談金のうち休業損害の部分について解説していきたいと思います。というのも、休業損害という言葉を聞いて、専業主婦だからもらえないものだと思っていたという方や休業損害についてよく分からないで保険会社に任せていたせいで、本来よりも少なくなってしまったという方を見かけることが少なくありません。 そこで、今回は休業損害について詳しく説明したいと思います。  

休業損害とは?

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前回少しお話ししましたが、休業損害とは交通事故によってケガをしてしまい、これによって仕事を休むなどして収入が減ってしまった場合の損害のことをいいます。 給与所得者であれば本来もらえるはずだった給料から減ってしまった部分が損害になりますし、自営業の方であれば去年の収入や売り上げを基準として、そこから減ってしまった部分を損害として考えることになります。  

有給と休業損害について

給与所得者つまり会社員の方などの場合、交通事故に遭ってケガした場合には有給を使って病院へ通院する方などもいらっしゃるでしょう。この場合、給料は減っていないことから休業損害はないと考えてしまう方もいます。 ですが、これは誤りです。有給というのは、それ自体が労働者の権利であり、本来は自由な時期に行使できるものです。それを交通事故のケガによって行使せざる得なくなった訳ですから使った有給の分だけ損害が発生しているという事になります。 実際に裁判例もこのような立場を取っており、大阪地方裁判所平成13年11月30日の判決では、有給休暇を使用した場合でも休業損害があると認めています。 このように、有給休暇を取っても休業損害は発生しますので、不安な方はどうすれば良いのか専門家に相談してみるのも良いでしょう。  

主婦と休業損害

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さて、有給休暇を取得した場合でも休業損害が認められることについて見てきましたが、専業主婦の場合にはどうでしょうか? 働いていない以上、収入がないのだから休業損害は無いと思われる方も少なくないのではないでしょうか。 しかし、それは誤りです。というのも、専業主婦が行う家事は確かに給与は発生しませんが、仮にそれを人にやってもらおうと思ったら当然お金が発生します。 自分の家での事だから誰も給料を払わないだけで、本来はお金が発生する立派な労働です。こうした考えに基づき、専業主婦の方にも休業損害を認めているのが現在の法律上の考え方です。

どうやって計算するの?専業主婦の休業損害

では、給料というものの無い専業主婦の方の休業損害はどのように計算するのでしょうか。 一般に専業主婦の方の場合には、その給与は全女性の平均賃金と同価として評価されます。 したがって、事故が発生した当時の「女性・学歴計・年齢計」の平均賃金額(平均賃金は、厚労省「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)というものを基礎とします。)を年収とし、これを365日で除した額が家事労働の日額給与額になります。 分かりにくいので、具体例で説明すると、平成30年に事故が起きた場合だと、同じ年、つまり平成30年の女性・学歴計・年齢計の平均賃金額を見て、それを365日で割った金額が家事労働の日額給与額になるという計算をします。 このように専業主婦の場合であってもしっかりと日給というものが計算されるため、交通事故によって家事ができなくなった期間分は休業損害が発生するということになります。  

休業損害について悩む前に専門家へ相談を

いかがでしょうか?交通事故に遭った際に多くの方は仕事を休んだりしなければいけなくなる場合が多く、それだけに休業損害というのは非常に重要な問題です。有給を使って大丈夫なのか、どの範囲まで休業損害として認められるのかなど気になる点は多いはずです。悩まれる前に是非司法書士や弁護士にご相談ください。