交通事故の刑事責任ってどんなもの

交通事故の加害者となった場合、どのような刑罰が科されるのでしょうか。交通事故の加害者になった場合、民事上の責任や行政上の責任も負いますが、今回は特に刑事責任について目を向けていきます。

人身事故を起こした場合

人身事故では、被害者が亡くなっているか、ケガをした場合には程度の程度で刑罰が決まります。

かすり傷のような軽いけがの場合もあれば、重い障害を負うこともあります。さらに後遺障害が残る場合もあります。ケガの程度にもよりますが、人の命や身体を傷つけているので、物損事故よりも重い刑事責任が科されます。

以前は交通事故に対して、刑法の業務上過失致死傷が適用されていました。しかし近年では悪質な自動車事故に対して厳罰を科す目的で、自動車運転過失致死傷罪が適用されることになりました。そして刑法の特別法として、自動車運転処罰法が新設されて過失運転致死傷罪も設けられています。

過失運転致死傷罪

正常な運転が難しくなる程度の飲酒運転、薬物を使用しての運転、スピードの出しすぎ、信号無視などの場合には、危険運転致死傷罪が適用される場合があります。

危険運転傷害罪は、1月以上15年以下の懲役が科されます。被害者が亡くなってしまった危険運転致死罪の場合には1年以上20年以下の懲役です。

飲酒運転

アルコールを飲んで運転していた場合には、正常な運転が困難な程度ではない場合であっても、人にケガをさせてしまった場合には1月以上12年以下の懲役が科せられます。

なお人を死亡させた場合には、1月以上15年以下の懲役が科されます。

加え飲酒を隠そうとした場合、別途1月以上12年以下の懲役が科されることがあることも覚えておきましょう。

物損事故の刑事責任

人の命や体を傷つけなくても、物損事故は被害者の財産にダメージを与えてしまう行為なので、こちらも罪に問われる可能性があります。

財産を侵害する罪というと、器物損壊罪が真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、過失で人の物を壊した場合には適用されないので、交通事故の場合には適用されないことも少なくありません。

しかし、壊した物が建造物であった場合、過失建造物損壊罪(刑法260条前段)の刑事責任を問われる可能性があります。人身事故に比べれば刑罰は軽いものですが、被害者に対して償いをしなくても良いという意味ではありません。交通事故で人の財産に損害を与えた場合にも、十分な謝罪と償いが必要となりることも覚えておきましょう。