自営業者で交通事故に遭った場合の注意点

f:id:kateikyoushilife:20201125111715j:plain


私も含めて司法書士や弁護士と言った職業は個人事業主、いわゆる自営業者になります。こうした自営業者は交通事故に遭ってケガをしてしまうと、仕事が全くできず非常に困った状態に立たされてしまいます。

会社員の方であれば有給休暇を取得するという方法もあるのでしょうが自営業者にはそのようなものはありません。休んだら休んだ分収入はゼロです。

そこで今回は私たちのような自営業者が交通事故に遭った場合に注意すべき点について解説していきます。

 

交通事故におけるサラリーマンの場合と自営業者の違い

交通事故の被害者になった場合には、休業損害と言われる仕事を休んだことによって発生する損害を補償してもらうことが保険金や示談金などでできます。こうした休業損害はサラリーマンの方の場合には計算が非常に容易です。

というのも付きの収入額が決まっているため、そこから1日辺りの収入を計算して休んだ日数をかけることで大まかな休業損害の金額を計算することができます。

しかし、自営業の場合は売り上げが月によって変動する事も多く、たまたま仕事が忙しい時期に事故に遭ってしまったようなケースではその後の仕事への影響も考えると、簡単には算出できるものではありません。

では、自営業の場合休業損害はどのようにして算出するのでしょうか。

 

自営業者の休業損害の計算方法

まず最初に断っておきたいのですが、自営業者の休業損害について必ずこれを用いて計算すると言った方法はありません。実際に裁判になっても裁判所が様々な資料を基にその辞令において妥当と思われる方法を用いることで事案の解決を図っています。

ここでは、一番理解しやすい方法として青本と呼ばれる日弁連交通事故相談センター本部が出している「交通事故損害額算定基準」に従った計算方法を紹介します。

この計算方法は非常にシンプルで以下のようになっています。

 

「事故前年の確定申告所得額」×「365分の1」=基礎収入日額

 

つまり昨年の確定申告で出した金額を365日で割って1日辺りの平均的な収入を算出して休業損害を算定する方法です。さてこのような休業損害の計算方法を用いる場合には以下のような点に注意する必要があります。

 

固定費の算入

自営業の場合、オフィスやお店の賃貸料と言った、何もしなくてもかかる費用、つまり固定費が発生します。このほかにも固定費としてはスタッフの給与など様々なものがあります。こうした固定費についても休業損害に含めて計算することが可能です。

この計算を忘れてしまうと大きな損害に繋がってしまうので十分に注意しましょう。

 

外注に出した場合の費用

このほかにも自営業特有の損害としてあげられるのが外注に出した場合の費用です。本来自分が受けていた仕事を第三者に外注する必要が生じるケースが考えられますが、こうした外注に出す費用についても損害として認められます。

 

確定申告より収入が多い場合

これについては原則として認められないという点を考えておきましょう。もちろん収入が確定申告より多いことを立証できればこうした収入を基礎として休業損害を求めることは可能ですが、過少申告自体が違法行為のため裁判所の心証はかなり悪くなります。

基本的には認められないと考えておきましょう。

 

自営業の場合は心配事がいっぱい

サラリーマンなどの給与所得者と異なり、自営業の方が交通事故に合った場合には、心配すべき事項が多数に上ります。特に自分が休んでいる間に仕事や会社が正常に機能しているだろうかと言う点や、正しく休業損害の補償を受けられるかなど様々な点について心配になるところです。

こうした心配を解決するためにも自営業の方は交通事故に遭った際には是非専門家にご相談頂くことをおすすめします。

保険会社だけでの交渉が示談金が安くなる理由について解説

f:id:kateikyoushilife:20201125111539j:plain


交通事故が起きた場合、ほとんどのケースでは保険会社に互いに連絡して保険会社間で示談金の額に関する交渉が行われ、提示された金額に満足すれば、これにて事故の処理が終了するという流れで処理されているケースが非常に多いと思います。 しかし、こうした保険会社のみで事故の処理を行うと示談金の額が非常に低額になりやすいと言うことはご存じでしょうか。 今日はこうした保険会社だけで決めた示談金の額が低額になってしまう理由とその背景について解説いたします。

保険会社の示談金の額が低い理由1

私たち司法書司や弁護士と言った交通事故の案件を経験している人間から見ると最初に保険会社から被害者へ提示される示談金の額は非常に低額になっているケースがほとんどです。というのも、保険会社が作成する示談金の額は保険会社の基準に従って計算されたものになっているからです。 最近はようやく知られてきましたが、実は示談金の金額を決める基準には保険会社が用いているものと裁判所が裁判になった際に用いる基準の2つがあります。 そして裁判所が用いている基準の方が高くなっているというのが実態です。 ですが、一般の方はそんなことは知らないので、保険会社は保険会社の基準に従って保険会社で作成した示談金を提示し、それで事件の解決を図っているという訳です。 しかし、こうした基準はあくまでも保険会社にお任せしているから、保険会社の基準にのみ従った計算になるのですから、司法書士や弁護士と言った裁判にしても良いと言える人が話の中に参加してくると状況が一気に変わります。 そのため、保険会社との示談金の交渉は是非外部の専門家に相談してみることをおすすめします。示談金の額が一気に上がる可能性は十分にありますので、まずはご相談ください。

保険会社の示談金の額が低い理由2

保険会社の示談金の額が低い理由はもう一つあります。そもそも保険会社は何故裁判よりも低い基準を用いて事故処理をしようとするのでしょうか?これは単純な理由で、自社の利益を確保するために他なりません。 保険会社は保険料の支払いを受け、これらを運用などして増やし、保険金の原資に当てています。そのため、支払う保険金の額は少しでも安く抑えたいのです。 また、保険会社同士だけで交通事故の処理をしてしまうと互いに保険金の額を下げたいという思いが強くなることからどうしても低額に抑えてしまうという側面もあります。 このように考えると、やはり保険会社同士での交通事故の処理は被害者にとってはあまり良い結果をもたらす可能性は低いと言えるでしょう。

弁護士費用特約などを使用して積極的に外部の専門家を活用しましょう

では、どうすれば適正な金額を受け取ることができるでしょうか。これについてはやはり早い段階から外部の専門家を交渉に入れることをオススメします。 特に契約している保険に弁護士費用特約がついている場合、弁護士や司法書士へ依頼した相談料などは保険会社が支払ってくれるため、被害者の方の持ち出しはありません。 積極的に活用することをオススメします。 というのも、司法書士や弁護士が介入しない限り保険会社は裁判基準での保険金の基準を用いることはまずありません。こうした外部の専門家が入ってきて初めてその金額を基準にした交渉を行うようになるのです。 示談金の金額が低くて納得できないケースでは積極的に司法書士や弁護士へご相談ください。示談金の金額が上がる可能性が一気に高くなります。 交通事故という一生に一度あるかないかの一大事となる場面では、できる限り納得のいく示談金を受け取って事故を解決したいところです。 交通事故を納得のいく形で解決するためにも是非外部の専門家に相談してみてください。

あおり運転の厳罰化について解説

f:id:kateikyoushilife:20201125111359j:plain


昨今、あおり運転によって発生した交通事故により被害者が死亡してしまったような事件があり、あおり運転が大きな社会問題として捉えられるようになりました。そこで、今年(令和2年)に道路交通法が改正され、あおり運転が厳罰化される改正がなされました。そこで、今回はあおり運転に関するこれまでの状況と改正によって何が変わったのかといった点について解説していきます。

改正前までの状況

相手の車の前に割り込んで急ブレーキをかける、ギリギリまで幅寄せしながら運転をするなどがあおり運転でよく見られる運転行為ですが、こうした行為についてこれまではあおり運転を直接処罰する規定がありませんでした。 しかし、2017年に東名高速道路であおり運転をしていた自動車にあおられた自動車に乗っていた夫婦が死亡するという痛ましい事故が起きてから、社会的にあおり運転の問題が認知され、今回の改正に至りました。 なお、改正前までは仮に警察が捜査すると言っても暴行罪という罪名で捜査をするほか無く、暴行罪の法定刑が2年以下の懲役か30万円以下の罰金という非常に法定刑の軽い犯罪となっているためこの点についても社会的な批判が集まったところでした。

改正後の道路交通法

こうした事件を受けて改正後の道路交通法には新たに妨害運転罪という刑罰が設けられることになりました。妨害運転罪の条文は読んでも内容が分かりにくいので簡単に説明すると、以下のような行為が妨害運転罪として禁止されることになりました。 他の車両等の通行を妨害する目的で、以下の①~⑩までの行為をすることが妨害運転罪に該当することになりました。 ① 通行区分違反 ② 急ブレーキ禁止違反 ③ 車間距離不保持 ④ 進路変更禁止違反 ⑤ 追越し違反 ⑥ 減光等義務違反 ⑦ 警音器使用制限違反 ⑧ 安全運転義務違反 ⑨ 最低速度違反(高速自動車国道) ⑩ 高速自動車国道等駐停車違反 違反した場合には、    ・3年以下の懲役又は50万円以下の罰金    ・違反点数25点    ・運転免許の取消し(欠格期間2年、前歴や累積点数がある場合には最大5年) が科されることになり、上記違反行為によって著しい交通の危険を生じさせた場合、    ・5年以下の懲役又は100万円以下の罰金    ・違反点数35点    ・運転免許の取消し(欠格期間3年、前歴や累積点数がある場合には最大10年) とさらに重い罰が科されることになっています。

注意点

今回の改正で注意したいのが、この妨害運転罪に該当してしまうと一発で免許取り消しがされる可能性があるという点です。これは非常に重い罰則になっているため、運転手の方は十分に気をつける必要があります。 また、①~⑩に記載した行為は自動車だけではなく、自転車に対しても適用があります。自転車に対して適用があるのは、⑥、⑨、⑩を除く7つのみですがそれでも十分に注意する必要があります。特に自転車はこれまで規制の少ない分野であったため運転手の意識としてこのような行為を避けるべきという認識が欠けている人も少なくないでしょう。 十分に注意する必要があります。

まとめ

道路交通法の改正により、あおり運転が厳罰化され交通指導の取り締まりの対象にもなるようになりました。ただ、現状ではまだまだどこまでが禁止されていて、どこまでがセーフなのかといった境界線が分かりにくく今後の事例の集積が待たれるポイントでもあります。ドライバーのみなさんはあおり運転にあったら慌てず、自動車を安全な位置に停車させ、警察へ通報しましょう。決してムキになったり腹を立ててはいけません。 こうした対応はさらなる自己に発展してしまう可能性や、ドライバー間のいざこざにもつながりかねないからです。 運転はあわてず、余裕を持って行うよう心がけたいものです。

従業員の起こした交通事故について会社は従業員に請求できるのか?

f:id:kateikyoushilife:20201125111149j:plain


会社の従業員が業務中に起こした事故については、従業員個人だけでは無く会社に対しても損害賠償請求が可能なことは比較的有名と思われますが、他方で会社としては本来交通事故を起こしたのは従業員なのですから、従業員個人へ負担してほしいと思う場合も少なくないでしょう。 しかし、実際にそんなことは可能なのでしょうか?そこで今回は従業員が業務中に起こしてしまった交通事故についての会社の責任と、会社が従業員に対して請求できるのかについて解説していきます。

従業員の交通事故について会社が責任を負う根拠

そもそも会社はどういった法的根拠に基づいて従業員の起こした事故について責任を負うのでしょうか。 この点については民法の715条がそのルールを定めています。 「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」 条文だけ読むと分かりにくいですが、つまり他人を雇ったり、用いて事業を行っている者が、その雇った人や使用している人が事業に際して第三者に損害を生じた場合(交通事故など)には、雇い主が賠償責任を負うという規定になっています。 実際に第三者に損害を生じているのは雇われている側なのに、会社が何故責任を負わなければいけないのか不思議に思うかもしれませんが、会社や雇い主は人を使って商売を行っている訳です。そうした商売には利益を得ることができるメリットもありますが、動じに第三者に対し損害を与えてしまうような場合も考えられるところです。 そうしたメリットを享受しているのだからリスクについても受け入れるべきであるというのがこの使用者責任の発想の根本となっています。 なお、「事業の執行について」という文言についてはわかりやすさのために、業務中という説明をしましたが、判例や裁判例などで厳密には業務中で無いけれど「事業の執行について」に該当するという結論を出す場合が多く、ケースバイケースでの判断がなされています。この点については、是非専門家にご相談頂くことをオススメします。

会社から従業員への求償

ここまでは会社が使用者の不法行為責任について責任を負うことについて見てきましたが、会社を経営する経営者の方から見れば、会社が負担するのは分かるが一部だけでも従業員に負担させることができないのかといった気持ちを持たれる方も少なくないでしょう。 この点については民法は次のように定めています。 「前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。」 この規定を素直に読むと、被用者、つまり事故を起こした従業員に対して求償を全額できるようにも読めます。 しかし、実際の裁判例などではこうした運用はされていません。最高裁の判決でも被用者から使用者への求償は、被用者の行為が使用者の業務としてなされた以上、たとえ実際に業務を行っているのが仕様車であっても、使用者が損害発生に寄与したものとして、使用者が応分の負担をなすべきだと考えるとしています。 このような観点から判例は「諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」において求償しうると判断し、全額の求償については認めないというのが裁判例などでの一般的な取り扱いとなっています。

従業員が事故を起こしてしまったら

従業員が事故を起こしてしまった場合には高い確率で会社がその損害を負担すべきという場面になります。従業員へどの程度求償するのか、本当に会社が責任を負わなければいけないのかといった部分も含めて、事前にご相談されることをおすすめします。

交通事故の死亡事故の場合における損害賠償について

f:id:kateikyoushilife:20201125110954j:plain


交通事故の中でも死亡事故は被害者が亡くなってしまうケースであり、非常に損害賠償の金額や示談金が高額になるケースが多い事故の一つです。しかし、何故高額になるのかと言った点についてお分かりの方は意外と少ないのではないでしょうか。そこで本記事では、死亡事故の際の損害賠償額や示談金額が何故高額になるのか内容に触れつつ解説していきます。

 

交通事故の損害賠償の内訳

交通事故、特に死亡事故の場合に発生する損害賠償の内容は以下のような項目になります。

①逸失利益

②死亡慰謝料

それぞれどのようなものになるか、項目ごとに見ていきましょう。

 

①逸失利益

死亡事故の中で最も大きな割合を占めるのがこの逸失利益です。被害者が生きていた場合に仕事などで得られたであろう収入を仮定して、得られなかった部分、つまり残りの人生で得るはずであった利益を損害とするというものです。

では、実際にどのような方法で逸失利益は計算されるのでしょうか。

計算式としては以下のようになります。

逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

 

生活費控除率というのは、死亡によって生活費が不要になるためその分を控除するために設けられた数値です。被害者が一家の大黒柱であったか等によって異なりますが、大体50%~30%間で計算されます。

 

最後にライプニッツ係数とは何かと思われるでしょうがこれについては非常に複雑で説明すると非常に長くなってしまうので割愛させて頂きます。一応就労可能年数ごとに保険会社などで決めた係数がインターネットなどでも公表されておりますので、詳細はそちらをご参照ください。

さて、逸失利益の計算を見て頂ければお分かりの通り、基本的にはその人の収入額に対して残りの就労可能と思われる期間をかけたものが数字の根拠になっています。

したがって、収入の高い方を交通事故で死亡させてしまったようなケースでは非常に高額な逸失利益が発生することになります。

例えば、事故当時年収1000万円、52歳の会社員が妻子を残して死亡してしまったようなケースでは、

基礎収入1000万円、生活費控除率30%、労働能力喪失期間(67歳までの年数=15年)に対応するライプニッツ係数10.380で計算されることになるため、

逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×ライプニッツ係数

    =1,0000000×(1-0.3)×10.380

    =72,660,000

つまり7266万円がこの場合の逸失利益となります。

 

②死亡慰謝料

逸失利益と並んで死亡事故の場合に大きな割合を占めるのが死亡慰謝料です。死亡慰謝料は、被害者が死亡したときに遺族の方に支払われる慰謝料です。

被害者が死んでいるのに何故慰謝料が発生するのか不自然に思う方もいるかもしれませんが、被害者の方は死亡する瞬間に強い不安感や恐怖感を感じていると考えられるので、被害者に対して慰謝料が発生すると考えられています。 こうして発生した慰謝料を遺族の方が相続するので、慰謝料請求ができると考えられています。

相続により請求することになるため、被害者と一定の関係にある親族しか請求することができません。具体的には①被害者の配偶者との子、②被害者の配偶者、③被害者の直系尊属(両親など)④被害者の兄弟姉妹等に限定されます。

 

その他の死亡事故の場合の問題

死亡自己特有の問題としては、事故の処理を進めていく必要がある一方で被害者の方の相続を進めていかなければならないという問題もあります。特に死亡から一定期間が経過してしまうと、全てを無条件で相続することになってしまうため借金などがあった場合には、予期せぬ借金まで相続することになってしまいます。

死亡事故の場合にはこうした借金問題と併せて解決する必要があるため、早い段階で専門家へご相談されることをおすすめします。

意外と説明できない?人身事故と物損事故の違い

今日は人身事故と物損事故の違いについて解説していきたいと思います。というのも、何となく二つの言葉があることや、違いがあるということを知っている方は多いのですが、いざどう違うのかという場面になると、正確に答えられる方は非常に少ないと感じているからです。 人身事故になるか物損事故になるかで、交通事故の処理というのは全く変わってきます。二つの違いをしっかりと押さえて適切な対処をしましょう。

人身事故と物損事故とは?

f:id:arakinblog:20200305223640j:plain

中身に入っていく前に、まずは、物損事故と人身事故とはそもそも何なのかと言う点から抑えていきましょう。

物損事故

物損事故とは交通事故のうちで物的な損害のみが発生した事故のことをいいます。

人身事故

人身事故とは交通事故により被害者がケガをしたり死亡したような事故のことをいいます。

ポイント

上の説明だけ聞くと元々持たれていたイメージに近いかもしれませんが、ここで重要なポイントとなるのは物損事故は、「物的な損害のみ」が対象になっている点です。 つまり、被害者がケガをした場合には、物損事故ではなく人身事故ということです。 物損事故はあくまでも、被害者が存在しない場合にのみ物損事故として処理されるという事になっています。この点を誤り、被害届を出さないでいると、人身事故なのに物損事故として扱われるリスクがあるということは前回ご説明いたしました。 被害届を出さない事のリスクについては、詳しくは前回の記事をご覧ください。

物損事故の場合の保険の対象について

では、物損事故を起こした場合の保険は何が対象になるのでしょうか。 保険のため、厳密には保険会社との契約内容によって異なりますが、多くの場合、対象になっているのは、乗っていた自動車や事故により破損させた物だけが対象になります。 ケガした場合でも物損事故として取り扱われてしまえば、保険の対象にはなりません。なぜなら、事故でケガをした人はいないということになっているからです。 この点が物損事故として処理されることによる被害者にとっての最大の怖い部分になります。 前回の記事でも触れましたが、被害届を出さないということはケガをした人がいないと扱われることになりかねません。そうなると保険会社も物損事故として処理するため、後からケガ人がいたことが分かっても、それが本当に事故でケガをした人なのかそうでないのかの判断がつかないため、対応が遅れることにもなります。 改めての注意点ですが、交通事故に遭い、ケガをしたときには絶対に被害届を提出しましょう。

人身事故の場合の保険の対象

他方で、人身事故の場合には治療費・入院費を初めとして、入通院慰謝料や、事故によって後遺症を負った場合の慰謝料、逸失利益など様々なものが対象となります。こうしたものは人身事故として扱われることで初めて対象になります。

人身事故として扱われるために必要なもの

被害者としてはまずは被害届を警察に出しましょう。実際に保険会社が人身事故として処理するためには事故証明が必要になりますが、これも警察が人身事故として事故証明書を作成することが必須になります。

交通事故が発生したときは必ず通報し被害届を出しましょう

f:id:arakinblog:20180225115153j:plain

繰り返しになりますが、交通事故に遭ったら必ず被害届を出すこと、そしてその場で警察に通報することが必須です。また、法律上加害者は、被害者を救護する義務に加え警察に通報する義務を負っています。 こうした義務を怠り、被害届を出さないように持ちかけてきたり、通報しないでほしいという人はそれだけで怪しい人です。そのような人間の持ちかけてくる条件や、そのような人と直接交渉を行うのは非常に難しいです。 きちんと被害届を出し、法律に則った手続きで進めましょう。

追突で被害者に過失割合が認められる場合とは?

f:id:jazz_jiko:20200822110325j:plain

交通事故の中で追突は最も起きやすい事故です。そこで、万が一、追突された場合に備えて被害者の過失割合を知っておくことは有益かと考えます。今回は、追突で被害者に過失割合が認められる場合について解説してまいります。

 

追突と被害者の過失割合

追突における被害者の過失割合は、基本は「0」と考えてよいですが、被害者に法令違反等の過失(落ち度)が認められる場合は一定程度の過失割合が認められてしまいます。

追突した側(加害者)が「10」、追突された側(被害者)が「0」が基本

追突の典型事例は、被害者が信号待ち等で停止していたところ、加害者がその後方から被害車両に衝突した、という場合ではないでしょうか?この場合、加害者には前方をよく確認しながら運転する注意義務があるのにこれを怠った過失が認められます。他方で、被害者には後方を確認すべき注意義務を課すことはできませんから過失(落ち度)を認めることができません。したがって、上記の場合、加害者の過失割合は「10」、被害者の過失割合は「0」とされるのが基本です。

追突で被害者に過失割合が認められる場合

もっとも、上記は追突の基本的ケースで、以下のとおり、状況によっては追突でも被害者に過失割合が認められてしまう場合があります。

被害者が駐停車禁止場所に駐停車していた場合

被害者が駐停車禁止場所に駐停車していた場合は被害者に「1~2」の過失割合が認められてしまう可能性があります。

道路交通法44条では車両が駐停車してはいけない場所等について細かく規定されています。

 

※駐車:車両等が客待ち等のため継続的に停止すること。又は、車両等が停止し、  

当該車両等の運転手がその車両等を離れて、直ちに運転することができない状態であること。

※停車:駐車以外の停止。

 

被害者が駐停車方法を守っていなかった場合

被害者が駐停車方法を守っていなかった場合も、被害者に「1~2」の過失割合が認められてしまう可能性があります。

道路交通法47条1項では「停車」方法について、「人を乗降させるとき、貨物を積卸しするときは、できる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない」と規定されています。また、同条2項では「駐車」方法について、「道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならにようにしなければならない」と規定されています。

被害者が灯火義務を怠っていた場合

被害者が灯火義務を怠っていた場合も、被害者に「1~2」の過失割合が認められてしまう可能性があります。

道路交通法52条1項では、「車両等は、夜間、道路にあるときは、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない」と規定されています。なお、夜間とは日没時から日出時までの時間をいいますから、季節によって灯火する時間帯が異なることに注意が必要です。

被害者が不必要な急ブレーキをかけた場合

被害者が不必要な急ブレーキをかけた場合は、「3」前後の過失割合が認められてしまう可能性があります。

道路交通法24条では「車両等の運転手は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない」と規定されています。仮に、加害者から急ブレーキによる過失を主張された場合は、「危険を防止するためやむを得なかった事情」を証明する必要があります。

 

まとめ

被害者が完全に停止しているからといって過失割合が「0」かといえば、必ずしもそうではない場合があることはお分かりいただけたかと思います。車を停止させる際も交通ルールを守ることが何より基本となります。

                                    
                                     以上

 

相手方に言われて...交通事故で被害届を出さないことのリスク

今日は交通事故で被害に遭った方の話を聞いていると時々耳にする、交通事故で被害に遭ったのに、加害者に言われて被害届を出さなかったというケースについてそのリスクを説明します。 先に結論から言っておきますが、加害者に言われたからといって被害届を出さないというのは絶対にやめておきましょう。  

f:id:arakinblog:20200614155647j:plain

交通事故には物損事故と人身事故がある

交通事故には物損事故という、単に物を壊しただけの事故と、人にケガをさせてしまった人身事故の2つの種類があります。 物損事故の場合、刑事処分の可能性は低いのですが、人身事故の場合には刑事処分の可能性もあり、仮に刑事訴追されなくても免許へ科される処分というのは物損事故より重くなります。 参考までにご紹介すると、一方的な不注意で全治一ヶ月くらいのケガを被害者にさせてしまった場合、9点の違反点数がつく可能性があります。この9点というのは違反歴の無い人でも30日間の免許停止処分になってしまう可能性があるほど重い処分になります。  

交通事故の現場での交渉には要注意

さて、このような処分の可能性があるとなると、日常的に自動車を運転する人や仕事に車が必須という人にとっては、運転免許停止処分というのは一大事です。仕事ができなくなることを意味するため、なんとしても避けたいところです。 また、仕事で自動車を運転する人ほど違反歴のある人が多く、今度違反したら免許停止になってしまうという人も少なくありません。 ここで、こうした加害者の立場になってあなたと交通事故を起こしたと想像してみてください。加害者としてはなんとしてもあなたに被害届を出すのを思いとどまってほしくなりますよね。 実際に、こうした事例というのは後を絶ちません。中には高額な示談金をその場で提案されたために、その要求に応じてしまう人も少なくありません。 金銭的にトクするんだから良いじゃ無いかと思う人もいるかもしれませんが、こうした事故現場での示談や交渉に応じるのは以下のようなリスクが考えられます。  

保険会社からの保険金や示談金は受け取れない

人身事故として被害届けを出さないということは保険会社からの保険金などは基本的に受け取れません。なぜなら公的に人身事故が発生したという証拠が無いからです。 したがって、こうなると加害者がちゃんと示談金を支払ってくれないと、補償は無い状態になってしまいます。  

加害者が本当にいった金額を支払ってくれるとは限らない

交通事故の現場で高額な示談金を提示されても、それを証明する方法というのは持っていない場合がほとんどです。 結局証拠が無いため、相手方改めて提示してきた示談金の額になる場合は少なくありません。  

そもそも加害者が分からなくなってしまった

f:id:arakinblog:20200507215459j:plain

最悪のケースはそもそも加害者と連絡が取れなくなってしまいケガをしただけになってしまうケースです。相手から連絡先を聞いたとしても、それが本当とは限りません。事故が起きてすぐに保険会社などに連絡すれば、保険会社を頼りに相手を特定できますし、加害者が払ってくれなくても保険会社が払ってくれます。 しかし、被害届を出さないとそれもできません。後から被害届を出せば良いと思われるかもしれませんが、加害車両も無い状態で被害届を出されても警察も対応に困るだけです。   以上のようなことから、交通事故の現場で被害届を出さないように依頼されたり示談を持ちかけられ、これに応じるというのは非常にリスクの高い行為です。どんなに良い条件をそこで持ちかけられても、それが守られるという保証はどこにもありません。 それどころか事故があったかどうかもあやふやになってしまう非常に危険な行為である事を認識しましょう。

専業主婦でも大丈夫?休業損害について

前回は示談金の内訳について説明しました。そこで、今回は示談金のうち休業損害の部分について解説していきたいと思います。というのも、休業損害という言葉を聞いて、専業主婦だからもらえないものだと思っていたという方や休業損害についてよく分からないで保険会社に任せていたせいで、本来よりも少なくなってしまったという方を見かけることが少なくありません。 そこで、今回は休業損害について詳しく説明したいと思います。  

休業損害とは?

f:id:arakinblog:20180225115153j:plain

前回少しお話ししましたが、休業損害とは交通事故によってケガをしてしまい、これによって仕事を休むなどして収入が減ってしまった場合の損害のことをいいます。 給与所得者であれば本来もらえるはずだった給料から減ってしまった部分が損害になりますし、自営業の方であれば去年の収入や売り上げを基準として、そこから減ってしまった部分を損害として考えることになります。  

有給と休業損害について

給与所得者つまり会社員の方などの場合、交通事故に遭ってケガした場合には有給を使って病院へ通院する方などもいらっしゃるでしょう。この場合、給料は減っていないことから休業損害はないと考えてしまう方もいます。 ですが、これは誤りです。有給というのは、それ自体が労働者の権利であり、本来は自由な時期に行使できるものです。それを交通事故のケガによって行使せざる得なくなった訳ですから使った有給の分だけ損害が発生しているという事になります。 実際に裁判例もこのような立場を取っており、大阪地方裁判所平成13年11月30日の判決では、有給休暇を使用した場合でも休業損害があると認めています。 このように、有給休暇を取っても休業損害は発生しますので、不安な方はどうすれば良いのか専門家に相談してみるのも良いでしょう。  

主婦と休業損害

f:id:arakinblog:20200226221159j:plain

さて、有給休暇を取得した場合でも休業損害が認められることについて見てきましたが、専業主婦の場合にはどうでしょうか? 働いていない以上、収入がないのだから休業損害は無いと思われる方も少なくないのではないでしょうか。 しかし、それは誤りです。というのも、専業主婦が行う家事は確かに給与は発生しませんが、仮にそれを人にやってもらおうと思ったら当然お金が発生します。 自分の家での事だから誰も給料を払わないだけで、本来はお金が発生する立派な労働です。こうした考えに基づき、専業主婦の方にも休業損害を認めているのが現在の法律上の考え方です。

どうやって計算するの?専業主婦の休業損害

では、給料というものの無い専業主婦の方の休業損害はどのように計算するのでしょうか。 一般に専業主婦の方の場合には、その給与は全女性の平均賃金と同価として評価されます。 したがって、事故が発生した当時の「女性・学歴計・年齢計」の平均賃金額(平均賃金は、厚労省「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)というものを基礎とします。)を年収とし、これを365日で除した額が家事労働の日額給与額になります。 分かりにくいので、具体例で説明すると、平成30年に事故が起きた場合だと、同じ年、つまり平成30年の女性・学歴計・年齢計の平均賃金額を見て、それを365日で割った金額が家事労働の日額給与額になるという計算をします。 このように専業主婦の場合であってもしっかりと日給というものが計算されるため、交通事故によって家事ができなくなった期間分は休業損害が発生するということになります。  

休業損害について悩む前に専門家へ相談を

いかがでしょうか?交通事故に遭った際に多くの方は仕事を休んだりしなければいけなくなる場合が多く、それだけに休業損害というのは非常に重要な問題です。有給を使って大丈夫なのか、どの範囲まで休業損害として認められるのかなど気になる点は多いはずです。悩まれる前に是非司法書士や弁護士にご相談ください。